ねこまたさんとの交流は長い。ネコネットに参加して、わりと最初の頃からの友達だから、７年とか８年とか前から行き来していたと思う。当時、彼女は大阪に住んでいて、公園で拾ったいつも下痢しておしりが汚いネコを「おしり」と名付けて、大切にしていた。おしりちゃんのことを語るねこまたさんは、シャイなんだか大胆なんだかわからない人で、独特のユーモアあふれる文章は「ねこまた節」と呼ばれていた。おしりちゃんだけでなく、こしりちゃんだとか、ちぼりちゃんだとか、ネコが増えていき、私は頭の中でそれらの名前がごっちゃになってしまい、お願いだから、ネコの名前に「お」と「し」と「り」を入れるのはやめておくれと思ったものだった。

　その後、転勤で東京に戻って来たので、拙宅での集会にも参加してくれたことがある。テニスの伊達公子にちょっとだけ似た可愛い人で、キャラクターはネット上と変わらぬ天然系。面白いだけでなく、律儀なところもあり、また、何事にも一生懸命な人でもあったと思う。

　ネコネット仲間はくくりがゆるく、学校のクラスメートのようなものではない。誰かが熱心に出席しているかと思うと、誰かはずっと休んだりする。出席の仕方がポツポツになったり、いつのまにか退学する人もいる。それぞれに実社会では色々とあるし、興味が移っていく場合もあろう。

　ねこまたさんは、やがてネット上の出席率がポツポツになった。それでも、おしりちゃんの健康問題を書いたり、ちぼりちゃんの肥満問題を書いたりする日記は時々更新されていた。本人には、元々膠原病の一種が持病としてあり、それ以外にも何か問題が見つかって手術したような話もあった。だが、ネコの病気については詳細に書く彼女は、自分の病気について多くを語らなかった。

　彼女がどんな病気で亡くなったのかは、今でも知らない。ねこまたさんの正確な年齢も知らないのだが、普通に考えると、健康ならば、あと３０年やそこらは人生を楽しんだはずだ。ネコ達とやさしいご主人を置いて旅立つのは、どんなに心残りだっただろうか？彼女はおしりちゃん達の飼い主であったが、本人はご主人を「私の飼い主」と捉えていたようだった。彼女自身がサイト内に「私を放し飼いにしている」と書いている。

　「虹の橋」は、先立った動物が、飼い主がやってくるのを待つ、天国の一歩手前にある待合所である。そこにいるのは生前、人間と深い絆を持っていた犬や猫なのだが、私は、ねこまたさんは、人間としては珍しく、「待つ」立場で、そこに行ったのだと思う。ねこまたさんの病いは癒え、元のままの姿で、他の飼い主を待っている動物をかまいながら、おしりちゃん達をのんびりと待っていると思う。そしてまた、彼女自身の「飼い主」のことも待っていると思う。

　ねこまたは〜ん、虹の橋のたもとにいる、ねこまたは〜ん、時間はかかるけど、そのうち皆行くよ。絶対に会えるから、安心して待っててね。一家全員集合してから、手をつないで渡れるよ。大丈夫だよ。

　でも、私は悲しい。