みゃあちゃん

　みゃあちゃんは慢性腎不全で二年間の闘病の後、亡くなったネコである。1999年の夏に旅立ったそうだが、今でもネットの上で会うことができる。みゃあちゃんのパートナーだったみかりんが、ホームページで彼女の写真や闘病記録を公開しているからだ。みかりん宅の網戸を前足で開けて入ってきて自宅を確保したという前向きのこのネコは、横顔がとても愛らしい。

　みゃあちゃんとみかりんにはパソコンに向かって「慢性腎不全＋ネコ」でやみくもに検索しているうちに出会った。患者側から見たこの病気の治療の現実がよくわかった。みゃあちゃん、みかりんペアは頑張れるだけ頑張って、壮絶な病院通いの末に力尽きた。みかりんのみゃあちゃんへの思いが痛いほどわかる心の軌跡が、ホームページに残されている。

　私はみかりんにメールを何度も送り、励ましやアドバイスをもらった。ネット上なので日本のどこに住んでいる人かもわからなかったが、やりとりしているうちに、うちからそう遠くないところに住んでいて、更に通った病院が同じＫ動物病院だったという偶然に驚かされた。

　みゃあちゃんの腎臓病と目いっぱい戦ったみかりんなのに、私へのメールに、彼女は書いた。
　「私はみゃあと一日でも一緒にいたかったから、最大の治療を選んだけれど、それは私のエゴで、みゃあには迷惑だったかもしれない。同じ道を誰にでもは薦めません」
　心に染みた。

　みゃあちゃんはとても外交的なネコで、病院にいるときも周囲に愛嬌をふりまいて可愛がられたそうだ。薬も上手に飲むことができた。それでもつらいことは山ほど起こった。疲れる通院、つらい治療、悪くなる検査結果。みかりんは貯金を取崩して医療費を払い続けた。

　ポン太の治療方針を決める時、最も参考になったのが、みゃあちゃんの記録だった。
　「この同じことを、ポン太にはできない、させられない」
　と前もってわかったのだった。もし、知らずに走り始めていたら、ポン太も私も追い込まれ、どこで止まったらいいのかわからぬまま、途方にくれていたと思う。

　みゃあちゃんにできる限りの医療を与えたみかりん、ポン太を自宅に置くことにこだわった私。選んだ道はまるで違い、延命できた時間も違う。だが、みかりんに悔いはなく、私にも悔いはない。愛の形がすべて同じわけではない。

　みゃあちゃん、ありがとう。
　ありがとう、みかりん。

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