ホテル脇の広い駐車場、確か三列目くらいに停めたよね。あれ？三列目と違ったっけ？四列目だったっけ？たくさんの車の中を荷物を持ってウロウロする。車のナンバーは鍵に書いてあるので、黒い小型車のナンバープレートをひとつひとつ見ていく。すると、同じ黒のパッソで、しかも「わ」ナンバーで、末尾だけ数字が違うのがあった。もしかして、レンタカー屋が鍵に番号書くとき間違えた？まさかそんなわけはなく、鍵は合わず、中を覗いてみると同じレンタカー会社から借りたとわかる書類が見えた。借りた人の名前まで見えた。もちろんサチコの名義ではなかった。

　車がない。

　いつぞやのデジャブだ。「車の盗難はレンタカーの場合どうなるのかな？」などと考えつつ、とりあえず私はホテルの人に相談してみることにした。オットはまだ一台づつ確認しているが、もう全部見たじゃん。

　フロント近くにいたお姉さんに「ずっと駐車場で車を探しているんですが、ないんです」と、鍵と駐車券を見せる。

　「どちらの駐車場を探されましたか？」
　「そこです」
　「そちらはハウステンボスの駐車場ですので、駐車券が違います。お客様はあちらの駐車場に車を置かれたのではありませんか。あちらがホテル宿泊者用の駐車場です」

　なんと、お姉さんが指差す方向にも、同じくらいの広さの駐車場があるのであった。先ほどの駐車場からはちょうど見えない位置であった。脱力。違う駐車場にいるオットを呼ばねば。オットの携帯に電話。即、留守電に繋がる・・・。いつものことだが、これにも脱力する。徒歩で戻って、謎が解けたことを伝えて、本来の駐車場へと歩を進める。

　あるがな。あっさり三列目にあるがな、黒パッソ。出発が３０分ほど遅れたが、安堵しつつ、平戸方面へと出発。今日も空は晴れ渡っている。地図を見ると、途中にいい景色が見られそうな場所があるので、ちょっと立ち寄ってみることにした。

　佐世保の造船所を過ぎ、坂を上りきったところに「石岳展望台」がある。ここから見えるのは、九十九島である。小さな緑の島々が海にこんもりと点在している。きれいだ〜。西海国立公園の一部になり、クルーズも人気の九十九島だが、時間的に船に乗っている暇はない。山の上で、左を見れば造船所、右を見れば南九十九島という、パノラマビューで満足した。ああ、車があって本当によかった。