掃除機が不調になった。ヘッド部分のブラシが回らなくなり、吸い込みが非常に悪い。 ネコ砂一つを吸い込むのに苦労して、いちいちヘッドを外したりする始末であった。 七年くらい使ったことだし、掃除機を更新することにした。前々から重さが負担だったので、 最近のトレンドらしい軽量のものを探しに家電量販店に行ったら、 ちょっとぉ〜、奥さ〜ん、本当に軽いのっ！持ち上げてみてビックリなの！

　ハイ、買いました。古いのの半分くらいの重さで、取り回しが楽ちん。音も静かめ。 散らかったネコ砂もバリバリ吸い込むわ。喜んで掃除をしていたら、フクの様子がおかしい。

　そもそも、フクは細かいことを気にしないネコだ。これまで、掃除機のことは好きではないが、 怖いわけでもないという態度であった。ガーガーやっている間、 逃げることなく同じ部屋にまずまず平常心でいるネコであった 。なのに、新しい軽量掃除機にビビっている。 フクの背中の毛が恐竜のようにトゲトゲになって立っているではないか。 高い所に登って、戦々恐々と新掃除機を覗き込んでいるではないか。え〜っ、こっちの方が断然静かじゃん。なんで？　

　ところで、フクはあまり鳴かないタイプで、 子猫のときはたま〜に小さい「ヒャッ、ヒャッ」という声が出るくらいであった。 育ってきたら、普通のネコらしい鳴き方をするようになった。要求があるときに「ニャ〜」って感じ。 あと、高いところから飛び降りた瞬間には、着地の衝撃で口から空気漏れがするらしく「フヒャッ」という声が出る。 そんな感じなので、決してうるさいネコではない。が、この日、新掃除機稼働中に、フクは喋った。日本語で喋った。

「イヤ〜ッ！イヤ〜ッ！　イヤ〜ッ！イヤ〜ッ！
　イヤ〜ッ！イヤ〜ッ！　イヤ〜ッ！イヤ〜ッ！　」

　ただ事ではない声だった。大ボリュームで「イヤ〜！」を連発しながら、 キッチンの隅に走って行く。私は掃除機を投げ捨てて、フクを追った。・・・あ〜、吐いたよ〜。

　フクはさっき食べた朝ごはんを全部もどした。 床にキレイな筒状のゲロ。見たところ毛玉は入っていない。 未消化のキャットフードをキッチンペーパーで片付けながら、 フクの嘔吐は新掃除機導入ショックだと思った。「イヤ〜ッ！」発言と嘔吐ね。 バーバルコミュニケーション＋ノンバーバルコミュニケーションで、とってもわかりやすい。

　ネコが吐くときの前奏は「ケコッ、ケコッ」が普通ではなかろうか。 いかにも詰まった毛玉を出したいんだなと思わせる音だが、 私、これまでにフクの「ケコッ、ケコッ」は聞いたことがない。

　そうじき申し上げると、吐く場面を目撃したことがなかった。うちに来て十カ月で、吐いた結果を掃除したことが一回あるだけ。 こやつはあまり吐かない体質なのだなと思っていた。 まさか、吐くときには毎回「イヤ〜ッ！イヤ〜ッ！」を前奏とするわけではなかろうな。

　「イヤだ」と言われても、掃除機は買っちゃったの。 これからずっと使うの。YOU TUBEでルンバに平然と乗っているネコとか大人気だけど、 あの「イヤ〜ッ！イヤ〜ッ！」→疾走→ゲロが撮れていたら、私もユーチューバーになれたな。

　次は動画撮りながらの掃除機かけに挑戦したい。