２０１８年の７月２５日に一歳の誕生日を迎えたフク、その頃までは食欲旺盛だった。 なんでもバクバク食べていた。食べ過ぎて肥満になるといけないので、私はフードの一日量をきちんと測って出していた。 ドライが計量カップのここまでと、ウェットが小缶一個ね。

　仔猫用フードを卒業し、成猫用フードへの切り替えもすんなり行き、フクはガチムチ体形になった。 ここで体重は４．４５キロ。胴体がそう伸びなかったのだが、これが完成形ということかな。

　・・・が、八月半ばになって、ドライの摂取量が減ってきた。しかも缶詰にひどく好き嫌いを言う。 ちょっと前まで食べていたネコ缶の匂いを嗅いだだけで、プイッ。はあ？

　そこで、食べた量を日々記録することにした。それを計算してみると、 体重に対する適切摂取量の５０％〜６０％しか食べてないではないか！ ・・・元気いっぱいで走り回っているけどね。排泄も模範的だけどね。 食欲不振は連日の猛暑のせい？　エアコン、ずっとオンだけど、フク、エアコンの冷気を避けて暑いとこで寝てるわな。

　焦った飼い主は策を講じてみるのであった。ドライにチュールを混ぜてみる。カツオブシをかけてみる。 ササミふりかけを乗せてみる。煮干しのトッピングしてみる。 フクはそういう物に一応興味をそそられるのだが、長続きがしない。ちょっとだけ食べて後は放置。

　ああ、食べてない。全然減ってない。興味を示さない。これが一か月も続くと、本ニャンより飼い主がやつれてきた。 必要摂取量の半分って何よ〜！！体重計に乗せてみる。 あれ？やっぱり４．４５キロ。全然減ってないやん。普通、食べなきゃ痩せるんじゃないの？ いったいどういう仕組みなの、このネコは？

　ネット検索してみれば、 「ネコの食欲不振はただのむら食いかもしれませんが、重篤な病気が隠れている恐れがありますので、 まず獣医さんに連れていってみましょう」みたいなことが書いてある。 う〜ん、獣医さんね〜。ササミ茹でたのとかマグロの刺身とかならパクパク食べるんだけどね。 わがまま感満載なんだけどね。これ、病院に連れていくべきかね？う〜ん。う〜ん。

　・・・ええい、悩むくらいなら、とりあえず受診させてしまえ。 動物病院にフクを運んで、体重を量ってもらうと、やはり４．４５キロある。全然痩せてない。 状況を説明するのもなんかバカみたいだ。

私　「この一か月、必要量の半分くらいしか食べません。でも美味しいものなら食べます」
先生「毎日の様子は？」
私　「すごく元気です」
先生「体重、減ってませんよね・・・」

　先生は触診したり、口の中を見たりしていたが、採血等はしなかった。

先生「成ネコになって代謝が変わったということもあります」
私　「はあ・・・」
先生「今後、体重が減って４キロを切るようになったら、連れてきてください」
私　「はあ・・・」

　この先生は「念のため」の検査をしないのである。 獣医さんの目にはフクに深刻な病気があるようには見えないようだ。 はあ、私にもとてもそうとは思えません。毎日楽しく大暴れで、私の手足は傷だらけです。

　元気なネコを連れてきた意味不明な飼い主は、診察室を出て、 受付で支払いをしようとした。そしたら、看護師さんに「今日は結構です」と言われた。 え〜っ！！私、払いたいのに〜。看護師さんは「フクちゃん、痩せているネコではないですからね〜」とも言った。 それって「フクちゃん、太っているから大丈夫」という意味ですかね。すみません、面倒な飼い主で。 スゴスゴ。私、ネコ飼い三匹目でこんな迷路に入り込むとは思わなかった。

　ネコ友達に相談してみた。

私「こうなってくると、必要摂取量に到達するまで好きなものをどんどん与えるべきかしらね？」
友「もうちょっと厳しく接してもいいんじゃないのぉ？若ネコだし」

　 そうだよね。病気のネコでも老ネコでもないもんね。 身体にいいフードを食べるよう躾けたいしね。そもそも体重減ってないんだし・・・。

　こういう場合、止められないのがネット検索というヤツだ。 ある日、たどり着いたキーワードが「ヒゲ疲れ」というもの。 曰く、「食事中、お皿のフチにヒゲが当たり続けることがネコのストレスになって食欲不振になります →こんなお皿に代えましょう→３７８０円（送料別）」という誘導。

　・・・。

　新しい切り口だわ。新しい商売ネタとも言えるが、確かに今のお皿は直径が短くて深めかもしれない。 顔を突っ込めばヒゲが当たっていることは間違いない。うちの食器棚にあったお皿の中から平たいものを選んで、 フク用にすることにした。

　それから様子を見た。しばらくすると、食事量の記録に「７０％」と書く日も出てきた。 お皿だったのかな〜？フク、細かいことは気にしないネコなんだけどな〜。 それとも涼しくなってきたからかな〜？お。「８０％」と書く日も来たよ。どれどれ体重を量ってみよう。

　ギャッ！　４．２５キロ！最盛期から２００グラムも減ってるやん！

　これが１０月半ばのこと。食事量が減って二か月も経っての体重減少。 フッちゃん、タイムラグあるわ〜。しかし、この後から「９０％」と書く日もあり、 ついに「１００％」の日も出現した。 ふと気が付くと、キッチン方面から聞こえる意欲的なカリカリ音。食べとるわ。 缶詰の好き嫌いは激しく言うが、トータルではそこそこ食べとるわ。

　１０月末。体重計に乗せてみる。４．３キロ。 底を打って反転したのか？

　１１月の今、夏以前のような食べっぷりではないが、体重低迷のまま、 ある程度安定した量を摂取している。なので、気を引くためのトッピングもあまり乗せなくなった。

　上から見ると、すんなりしたオトナネコ体形に変わったような気がする。 私がガチムチと思っていたのは、実は幼児体形だったのだろうか。 フクがうちに来てから一年が経過した。ヘタレ飼い主の右往左往に関係なく、 フクは本能で自分の成長や健康をコントロールしているのかもしれない。

「食べるか食べないかはネコが決める」って、タラが１５年かけて教えてくれたのにね。すまんの。