〔事情その一〕
　フクはケージ内にくっつけた水入れからしか水を飲まない。 フード置き場の脇にも水入れは置いてあるが、そっちは仏壇のお水のようなもので、ただのお供え。

〔事情その二〕
　ケージ内にあるネコトイレを移動できない。 フク以前、ネコトイレは納戸に置いてあった。 納戸に付いているフラップドアは納戸から出る時にのみ使用される。 リビング側からは絶対にくぐらない。

〔事情その三〕
　何かの工事が入った折に、フクをケージに閉じ込めておかないとワヤになる。 フク、作業中の人と遊ぼうと思うな。

　そんなわけで、インテリア的にはぶち壊しだが、 しょうがなくケージを置いているという日常の中、 最近、フクがケージ絡みで称賛に値する行動をとるようになったので、 ここに書きとめておきたい。

　コロナ禍で、スポーツクラブに行き辛くなった私は、 ＹｏｕＴｕｂｅのヨガ動画を頼りに自宅でヨガを始めた。 テレビにＹｏｕＴｕｂｅを出して、就寝前の三十分くらい、 身体と心をほぐすリラクゼーションヨガをやることを習慣にしている。 フクは衝動性の強い咬みネコなので、ヨガマットの上に伸ばした私の手足に 「パクッ！」と来ることがままある。なので、「危ないな」と思ったら、 その時間だけフクを別室に閉じ込めたりした。 落ち着いている時は出っ放しもあったが、 ハイになっている時はケージに入れてロックしたこともあった。

　 　二か月くらい前のある夜、いつものようにマットを広げてヨガチャンネルをつけたら、 フクがケージに入っていた。ケージは内部が二階建てになっていて、 その二階部分に敷いてあるフリースの上でフクがくつろいでいる。 これは都合が良い。ケージのドアは開きっぱなしだが、出て来る気配はないので、 その傍で伸び伸びとヨガをさせてもらった。

　数日して、またフクがケージの二階部分にいる事に気が付いた。 時計を見ると10時半。そろそろ私がヨガを始める時間だが、今日は他のことをしていて、 お風呂がこれからになってしまった。ヨガは更にその後になってしまう。 「チャンスだったのになあ」と思った。

　これ以降、夜遅くに、フクが自らケージに入る行動が何度も観察された。 私がヨガをしようとする時間と必ずしも一致するわけではなかった。 しかし、これまではフクが自分からケージに入るのはトイレと水の時だけで、 まして二階部分に上がることはほぼ無かったので、不思議な習慣が始まったものだと思った。

　そんなこんなで、何週間か経った。さ〜て、今宵もヨガマットを敷いて〜、 テレビをつけて〜、ＹｏｕＴｕｂｅに切り替えて〜、好きなシークエンスを選んで〜、 ああっ！！フクがケージに入って行く！！ケージの二階に上がって毛づくろいを始めている！！

　この頃から、ヨガとケージ入りの時間がシンクロし始めた。 フクは私の動きを見てからケージに入っている。間違いない。天才か！

　ところで、コロナはオミクロン株に変異して以来、陽性者数が増えたものの、 軽症や無症状の人が多いので、その場合は入院せずに自宅で過ごしておられるようだ。 自宅隔離というものは、玄関の前に誰かがいて見張っているわけではなく、 本人はかなり元気なので、出ようと思えばいつでも出られる。でも日本人は基本マジメなので、 「人様に迷惑をかけないこと」を旨とし、私が知る限りでは皆さんちゃんと自宅に籠っておられるようだ。

　出ようと思えば、いつでも出られるのに、飼い主に迷惑をかけないよう自主隔離するネコ。尊い。

・・・そもそも、咬むの止めたら全て解決だがな。