タラは顔でポン太に激しく負けていた。ポン太は丸顔に大きな目、鼻周辺がこんもり、の坊ちゃん顔であった。いくつになっても童顔で愛らしかった。ネコを顔のいい順に１０匹ならべたら、二着か三着あたりにポン太がいるであろうというのが、飼い主としての評価であった。

　タラは細顔、とんがり鼻、小さい目である。極道社会の下層でチョロチョロしているチンピラにありそうな顔つきだ。「黒目がちの目」という表現があるが、タラの場合「黒目負けの目」だった。ネコの黒目が明るいところで細くなるのはあたりまえだが、暗いところでも黒目があまり大きくならない。黒い部分が丸くはなるが、その丸の直径が小さいので、なんだか、びっくりしたような顔になってしまうのだった。先ほどならべた１０匹のネコの中にタラを混ぜてみた場合、後ろから探せばすぐに会えそうだった。

　ポン太はいかにもネコらしい安定した体型をしていた。丸い重量感のあるお尻に風情があった。座るときは、四本の足をちまちまとそろえ、後ろから尻尾をくるりと回して足の上にかぶせた。置き物のように美しい座り姿で、ハガキ一枚程度のスペースがあれば底面積は充分だった。

　タラは顔だけでなく、身体も細長い。そのせいで安定しないのだろうか、座るときに必ず四本足を開いて、つっぱっている。おまえは東京タワーか？尻尾が長いのはポン太と同じだが、前に回してまとめることはない。後ろにツーッと伸びたままで、このネコはスリムなのに場所ふさぎである。えらそうだ。電車でこのような座り方をする若いモンがいるような気がする。

　タラは子猫として不利な面相であった。カレンダーや雑誌のグラビアに採用される子猫を見てみよ。丸顔で、つむったおメメは長い弧を描き、それはそれは愛らしい。眠っているタラ？つむったおメメはアクセント記号程度である。斜め上方に上がったっきり、弧は描かない。「それでおしまいかい！？」と昼寝中のタラに突っ込んだものだ。切れミジカな目に長い顔では、カレンダーネコにはなれません。

　今、タラは６ヶ月を越したところである。身体がぐんと伸びて、３．２キロほどになり、子供っぽさが消えてきた。ネコの６ヶ月は人間の中学生くらいあたるのかもしれない。

　最近、タラが凛々しく見えることがある。伸びやかな肢体に小さな頭、すっきりとした醤油顔。飼い主の欲目だろうか？　皆さまのご判断を仰ぎたい。

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