取扱説明書を出して、「故障かなと思ったら」のページを眺める。そのページにあるどの例も、この症状には該当しないが、「時々、吐水口のフィルターを掃除しましょう」とあったので、書いてある通りにやってみることにした。外してみたら、フィルターはきれいだった。これとの関連はないな。壊れたのか？一年を越したってことは、修理は有償？　壊れるのなら、もう一か月くらい早く壊れてほしかったかも。

　最初の頃は、時々「ブブブッ」の不調が現れるだけだったのだが、段々と頻度が上がってきた。二日に一回くらい「ブブブ」。「そのうちお湯が止まらなくなるかも」と不安になって、取説に書いてあったメーカーの相談室に電話してみた。状況を説明すると、「代理店の者を派遣します。無償です」とのこと。おお、さすがＴＯＴＯ、対応が太っ腹。一応、「その音は出たり出なかったりがあるんですけど、修理の方が来られた時に症状が出なくても大丈夫でしょうか？」と念を押してみる。「かまいません」のお返事。ああ、ＴＯＴＯは心も広い。

　そして、代理店から修理のお兄さんがやってきた。「この部品を取り換えたら治ります」と言い、作業にかかった。うちのタラは工事関連の人を嫌うのだが、ちょうどタンスの上（←ベッドの下と並んでタラの避難場所に指定されている）で昼寝していたので大丈夫だろうと思ったら、お兄さんが訪れたとたん、ガバッと起き上がって、畳に降りてきた。ＷＨＹ？　降りてきたタラは、鼻面で押入れの襖の合わせ部分をグイグイと押し、少しできた隙間に顔を突っ込み、そのまま胴も突っ込んでムリムリッと押入れへと身を隠した。情けないやっちゃ・・・。

　工事といっても、たかがスパウト内の部品を一つ変えるだけなので、たいして音はしない。たまに「カチャカチャ」くらい。が、しばらくしてから「ブブブブブブッ」とおなじみの音が・・・。

　「あの、治ってない音がしましたが？」
　「はい・・・。部品を交換したんですが、治りませんでした」
　「は〜」
　「違う部品を交換しますので、それを取り寄せてからまた来ます」

　その夜、いつものようにお風呂にお湯を張る。しばらくあの「ブブブブブッ」を聞くことを覚悟せねばなるまい。相当響く音だけど、真下の神経質な奥さんが文句言ってこなければいいが。なにぶん、上下のパイプって繋がっているからな・・・。

　あれ？　

　タイマーのカウントダウンが終わった瞬間、お湯は何の音もなくスイッと止まった。治ってるやん。今日のお昼の修理が、若干のタイムラグをもって効果を発揮したのか？不思議なことよの。その後、湯を出したり止めたり、実験してみたが、常にスイッと止まる。ほへ？

　次の日、ＴＯＴＯの代理店から電話があった。

　「お風呂の蛇口の件ですが、ＴＯＴＯ本社の人が状況を見たいと言っているので、来週一緒にお伺いしてもいいでしょうか？」
　「そ、それが、今のところ、ブブブブが止まってるんですけど」
　「かまいません。お宅のような例を検証したいそうなので」

　で、今日、代理店のお兄さん＋ＴＯＴＯ本社の人が二名、やって来た。本社の人は一人がスーツで、一人が作業着。スーツの方が私に「写真や動画を撮ってもいいですか」と尋ねる。もう、なんでもしてください。問題は、問題が消えたってことなんですけど・・・・。 　今日のタラは、偶然最初から押入れで昼寝をしていた。六月というのに朝から肌寒い日だったので、暖を求めて布団の上に陣取ったとみえる。男三人が来たことは察しているに違いない。もうずっとそこに入っておれ。

　三人の声が、聞こえる。スーツが指示出しをしているようだ。

　「はい、出してみて」
　「はい」
　「止めてみて」
　「はい」
　「正常ですね」

　会話を漏れ聞いていると、その症状を出すために、先日外した部品をつけ戻したりもしているらしい。が、聞こえるのは話し声とカチャカチャいう作業音だけで、ブブブ音はない。やっぱ、完全に治っておるね。途中に問題の発生状況についての私へのインタビューもはさみながら、一時間弱。実験やら確認やら撮影やらこの前とは別の部品の交換作業やらをしたのち、スーツが言った。

　「治っていますので、ご確認ください」
　「すみません。なんか、救急車呼んだら元気になった病人みたいで・・・」
　「いえ。また、何かあったらまたすぐにご連絡ください」

　三人が玄関から出て行ったら、タラが周囲を見回しながら押入れから出てきた。つい先ほどまでごちゃごちゃやっていたお風呂方面を視察。お前はお前で、消防車が引き上げてから現場に来た野次馬のような。

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