「またこのネコ缶かいっ！　マグロは飽きたんだよっ」
　「けっ、サイトにオレの悪口ばっか書いてんじゃねーよっ」
　「てめ、猫草がとっくに枯れてんの、目に入んねーのかよっ」
　「おらっ、ベランダのあの鉢っ、もー伸びてんじゃんよっ。さっさと取り込めっつーの！」

　そう、今日は猫草の話である。タラは猫草が大好きだ。どんなネコ缶を開けてもらうより、新鮮な猫草が出てくるのがうれしい。うちはベランダガーデンをやっているので、その隅で猫草の種を蒔いては育てている。葉っぱが７、８センチに伸びたところで室内に入れるのだが、この瞬間をタラは見逃さない。私がベランダに出るのは猫草のためだけではない。洗濯物を干したり、花に水をやったりと、様々な業務がある。タラは違いのわかるネコである。猫草の鉢を持って室内に入ろうとする時のみ、事前にタラがガラスの向こうでスタンバッている。高い位置に持った鉢に飛びつこうとしたり、人の脚にすがったりしながらついてくる。猫草の定位置であるステレオ脇までジタバタしながらついてくる。

　鉢は転倒防止のため、プラスチックのカゴに入れられ、そのカゴの下をくぐらせた紐でくくってある。タラはこの鉢に顔を突っ込んで草を食べる。無我夢中で食べる。おまえは牛か？　だが、いかんせん、ネコは肉食動物なので、歯の生え方が草食に向かない。ひたすら草を引っこ抜くタラ。口に入る方が少なく、あたりの床は抜かれた草だらけ。もったいないので、私が拾ってタラの口に持っていく。何につけ、手間のかかるヤツだ。

　室内に取り込まれた草がおいしくいただける賞味期限は三日というところか。散々噛まれて、ぐちょぐちょになった猫草に、タラは見向きもしなくなる。草の方としても毎日噛まれるストレスか、室内だと枯れるのが早い。そこでベランダでは、常時複数の鉢で蒔き時をずらして栽培することになる。冬場は発芽も生育も遅いので、鉢にラップをかけて輪ゴムをはめておく。この簡易ハウスで成長促進ができるのだが、芽が二センチも伸びると上のラップが邪魔になるので、そこからは常温栽培するしかない。ラップを外すと鳥が狙うので、カゴを逆さまにして鉢に被せる。私の苦労は尽きない。

　せっせと栽培するから、種がたくさん必要になる。ペット用品売り場にある「猫草の種」は小分けになっている。よく買うタイプは１５グラムの種が５袋入って４１７円だ。７５グラムで４１７円は高い。猫草の種の正体は燕麦である。オーツ麦とも言う。米５キロが安いものなら１８００円程度なのに、雑穀でこの値段はないだろう。同じ種が鳥の餌としても売られているが、こっちは３５０グラムで３１５円。ずっと安い。これを買ってみよう。

　鳥の餌用オーツ麦を鉢に蒔いた。あれ？なんか、様子が違う・・・。改めて袋を眺める私。そこには「皮剥き済み」の表示・・・・。あいたたたた。これは鳥さんが食しやすいよう、表皮を除いてあるものであった。悔しいので一応蒔いてみたが、いけません。発芽率１５パーセント以下。しかもやっと出た草はよっちゃれていた。鳥を飼っている知り合いもいないので、廃棄処分に。

　二ヶ月くらい前のこと。ネット販売している種屋さんを発見した。無農薬キャットグラスの種、８００グラムで８００円。割安だ。これだけあれば心置きなく栽培できる。購入フォームに住所氏名等を記入の上、次の画面に進む。商品代金８００円＋消費税４０円＋送料全国一律８５０円＝１６９０円。ほへ？　振込み総計が商品代金の倍を超えている。考え込む私。１６９０円が払えないわけではないが、８００円のものに８５０円の送料を使うのが悔しい。最近郵パックは安くなったというし、宅配便にしても神奈川県にあるこの会社から隣の東京都に８００グラムを送るのにその送料はないのではないか？うちの近所にここの種を扱っている小売店はないのか？「２０００円以上のお買い上げは送料無料」っておっしゃるが、種以外買える物のないこのサイト、猫草の種３袋、総計２キロと４００グラムも取り寄せるわけにはいかないですがね。企業努力が望まれる。

　という趣旨のメールをこの会社に送ってみた。お返事はない。昨日、ふと、そのサイトを久々にチェックしてみた。あれ？様子が変わっている。「HPをリニューアルしました」とある。

　どれどれ。あり？「２０００円以上のお買い上げは送料無料」の表示がなくなっている。試しに購入フォームに記入してみると、種一袋の送料が７５０円と出た。１００円安ね〜。企業努力はそこまでか？サイトをあちこちクリックしてみる。あ！！ここの種を卸している小売店の一覧表が出てる！！　おおっ！！この店はうちから車で１０分のとこじゃんっ♪

　苦情も言ってみるもんである。

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