32  結構毛だらけ

     三年前に「貰ってほしい」と言われた子猫が、茶トラ白であると聞いて、「いいかも」と思った。亡くなったポン太は顎の下を除いては、全身茶トラであって、姿形の美しいネコではあったが、色柄的にはちょっとダサい気がしていた。でもポン太が顔だけでなく性格もとてもいいコだったので、茶トラは好きになった。その茶トラが入って、白が入っている子猫。いいかも♪

 タラは、柄は良かったが、ガラの悪いネコだった・・・。大事に飼ってやれば、そのうち性格が丸くなるかと期待したら「三つ子の魂百まで」だった。

 タラを貰う半年くらい前、まだポン太存命の頃、リビングのソファのカバーを注文した。うちのソファは某家具メーカーの定番モノで、購入後何年たっても、布だけ注文してやりかえることができるのである。南向きの部屋にあるソファは色褪せが早い。以前のブルーグレーの布は色が抜け、薄汚れた白のようになっていた。そこでお店から見本の布を取り寄せた。10色以上あったと思う。私は色を見ることもさることながら、布を手でなでては真剣に感触をみていた。表面がザラザラしているとソファがネコの爪とぎになってしまうこと必至だからである。いい感じの茶や青があったが、それらは材質面で不安があった。マスタードイエローの布があった。これは丈夫そうで、触ると滑らかで、イケそうだと判断。リビングのソファは黄色に決定した。

 濃い黄色は好きな色だが、ソファがすべて黄色でくるまれたら、部屋に落ち着きが無くなった・・・。うちのソファは大きいので、リビングにおいて黄色の占める割合が大きすぎた。材質にばかり注意がいったのが敗因である。カバーはまた買い換えるには安くないので、違う色の大きな布を買ってきて上からかけるようにした。濃い色で黄色を半分くらい隠すと、まぁまぁな感じになる。不本意ではあるが、いたしかたない。カバーのカバーは簡単に洗えるのでネコ飼いには便利。

 ゴールデンウィークに布地屋さんに立ち寄った。スカートを縫うつもりで布を見ていたら、コーデュロイが半額セールになっているのを発見!季節的にもう売れないので、見切り処分のようだ。これでカバーのカバーを新しくしようと思いついた。黄色に合う色で床の色とも違和感がなくて・・・・・・私はチャコールグレーを選んだ。
 「これ、6メートル50センチください」
 係の人に切ってもらって、値札を書いてもらい、レジに運ぶ。あれ?1000円札一枚でお釣りが来た・・・。私の頭の中のアバウトな計算と全然違っていたが、そもそも計算が苦手なのでそういうこともあるかと、迅速にレジから遠ざかり、足早に店を出て、さっさと帰宅。家でレシートを見たら、最初から半額で打ち込まれている値段に、レジにて更に五割引きされていた。しかも一緒に買ったスカート用の布と糸もまとめて五割引きにしてある。大胆なセールだ。

 さっそくミシンを出し、ソファのサイズに合わせてドドドッと縫って、よいこらしょと上からかけた。おお、しぶい!部屋が引き締まる。だが、うちの照明の下で見るとチャコールグレーというより、ほとんど黒だった。

 ガラの悪いネコが新製品の安全点検にやってきた。さっそくソファの上に座り込む。カバーの上で身体をコネコネする。後ろ足で首をカカカと掻く。あああっ!!黒い布が白と茶色の毛だらけに〜!!五月はネコの喚毛期〜!!

 柄も悪かった・・・・。

   
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