近所の中学生だった。ポン太がいなくなって一週間、すでにニュースは拡がっているようだ。

「あのね、友達んちのネコが妊娠してるんだって。生まれたら貰ってやって」
　心の準備はまるでできていなかったが、とりあえずこう言った。
「そうなの。じゃあ、また情報だけは流してちょうだい」

　情報は携帯メールで逐次入ってきた。
「四匹産まれたよ」
「うち、三匹死んじゃったんだって」
「生き残りはオスで、長い尻尾。白と茶色で可愛いよ」
「一緒に見に行こう。きっと気に入るから」

　 　訪れた近所のうちで出会った子猫は、まだ二ヶ月に満たないヨタヨタ歩きのチビだった。そこんちの中学生が、子猫を「ハイ」と私に抱かせた。チビは四本足でイヤイヤをして腕から逃れた。元気だが、気が強そうだ。顔を覗き込んでみた。

　アレ、このコ、目が小さい。顔が長い。ポン太の「丸顔に大きな目」がネコの標準になっていた私は、ちょっととまどった。傍らにいる母ネコを見ると、細長い体型に面長な顔。しゃなりとした姿は夢路の美人画のネコ版と言えないこともなかったが、う〜ん、イメージ、違うなあ。コレ、どうしようかなあ。

　その時、その家の居間には人間６人、犬一匹、ネコ二匹がいた。しばらく家族と雑談をしていたら、このチビが怪しい足取りで、私をめがけてやってきた。私の膝にエッコラショとよじ登り・・、丸くなり・・、そして、ウトウトと眠り始めたのであった。見下ろす子猫のきゃしゃな肩には小さな茶色いブチがあって、呼吸とともに上下した。膝が温かかった。やられた・・・・。

かくして、２００２年、６月、生後八週間のチビネコがうちの二代目となった。タラと名付けた。

「おまえは最後までタラフク食えよ」という願いであった。