Before
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　浴室、洗濯機置き場、洗面台、トイレ。これら、近接しているどれも３１年モノの四点の中で、もっとも老朽化があからさまでないのは、実はトイレであった。ちょっと古い形ではあるが、まだそこそこキレイだし、何年か前にタンク内のフロート等、部品の総取替えしたことがある。だが、後付けしたウォシュレットは家電として寿命が近いかもしれない。数年前のこと、ウォシュレットのタンクからポテｯポテッとわずかな水漏れがして、しばらく下に洗面器を置いていたのを思い出す。なぜか何も処置しないのに数ヶ月で水は止まったのだが、アレは何だったんだろう？　ウォシュレットのみの交換というのも可能だが、この際、便座とセットで取り替えてしまうか。最近のトイレは節水率６０％という話だし。

　トイレに関しては、私の頭に前知識も理想イメージもほとんどなく、タイプ別の違いももうひとつピンと来なかった。ショールームに行って現物を見ても「ふ〜ん」という感想。メーカーが前面に押し出しているのは「タンクレス」という代物だった。便器の後ろには何もない。トイレ内に手洗いが欲しい場合は、省スペース型の水栓付きシンクを脇に増設することになる。ウォシュレットは内蔵。おされと言えば、おされだが、それなりにお値段は立派。更には、人間が近づいたらフタが自動で開くわ、立ち上がったら水が勝手に流れるわ。・・・そこまでやるか？

　うちのマンションは水圧が低めに設定されている。給湯システムのせいかなんからしい。素人考えなのだが、タンクがないということは、水道管から直接、低めの水圧で、しかも６０％節水で、ジャーッと来るということだろうから、すべてが無事流れてくれるのかどうかが不安である。あと、突然の断水の場合、タンクがあれば、少なくとも、タンクに残っている一回分は流せるが、タンクレスだといきなりアウトかも（笑）。・・・という考えに基づき、タンクはアリで行こうと決めた。その方がずっと安いし。タンク付き便座の上に、種々あるウォシュレットのうち、自分が必要な機能だけついたのを組み合わせればいいや。住宅設備メーカーのカタログは、たいがい高級な商品が最初の方に出て、ページをめくるにつれ、だんだんとグレードが下がって行くのがパターンである。選んだトイレはかな〜り後ろのほうのページの出身とあいなった。

　そんなわけで、お風呂や洗面台の企画に比べると、トイレ関連において、当初、私のテンションは低かった。しかし、付属品には少々思うことがあった。ひとつには、手すりの設置だ。今のところ、我々の立ち座りに身体的問題はないが、先々のことはわからない。この機に付けとくというのが、転ばぬ先の杖というもの。ユニットバスには手すりの後付けが問題なくできるそうだが、トイレの壁だと、下地補強をバッチリしないと付けられない。内装も関連することだし、このタイミングでつけてしまえ。

　トイレメーカーにも、もちろん各種手すりは売っているが、私は「クネット」に興味を持っていた。このクネクネと曲がった手すりは、持つ箇所により、横方向にも縦方向にも力を入れることが出来、すべりにくく、しかも、形が楽しい。当面使わなくても、「オブジェ」として愛でることすらできそう。自分でネット取り寄せして、設置をＫさんに頼んでおく。

　タオル掛けは新しくするつもりだったが、ペーパーホルダーは「古いのの付け直しでいいかも〜」と思っていた。・・・が、ＴＯＴＯのショ-ルームで、とある展示品を一目見て、恋に落ちてしまった。このホルダーと、同デザインのタオルリングがペアで欲しいわん（はあと）。こうなってくると、トイレ改装にも若干のノリが入ってきて、トイレマットと、同色のタオルも事前購入するのだった。ただし、無印で。

　[ 早送りで、工事四日目に進む　]

　トイレを入れ替える日、Ｋさんは「すましといてくださいね」と言った。古いトイレが撤去されて新しいのが入るまで、トイレがないですよ、という意味だ。ま、幸いと、ちょっと下に降りればマンションの集会所のトイレが使えるので、ジタバタする必要はない。旧トイレがドナドナになり、速攻で内装のＯさんが床と壁を張り替え始める。この順番でやらないと出来上がりがキレイにならないのだ。暇そうなＫさんとＳさんは、玄関あたりの古い壁紙を剥がしていたが、それも終わってしまい、早めのお昼に出かけてしまった。

　私：　「Ｏさん、お昼ご飯は？」
　Ｏ：　「ボクの作業でＫさん達を待たせてますから、通しでやらせてもらいます」
　私：　「え〜っ。お昼抜きで？うち、昨日作ったカレーがあるけど、食べます？」
　Ｏ：　「いや、５分の時間も惜しいんで」

　Ｏさんは、黙々と、延々と作業を続けた。その根気と集中力に驚嘆する。三時頃だっただろうか、トイレ周辺の内装が美しく仕上がり、新しいトイレが設置された。あっら〜、いいかも〜。タンクレスじゃなくても、なんかモダンな感じが漂っているかも〜。よしよし、ここに買ったばかりのマットを敷いて、タオルをかけてっと。床と壁のマッチングもうまくいったようだ。むふふ。

　その日の夕刻、うちに女子高校生の来訪者があった。「新しいトイレ、見た〜い！」と言うので、ドアを開けてやったら、「きゃーっ、素敵！！　おっしゃれー！　まるでニトリみたい！」と言われた。 ニ、ニトリ・・・っすか？　その心は、「お値段以上」？

After
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