時間まで、まだまだゆとりがあったので、プールサイドでだらだらすることにした。いくつかあるプールの中央あたりに、葉っぱの密生したとても大きな木があって、しっかりとした日影を作っている。その下のデッキチェアにタオルを広げ、しばらく読書。似顔絵描きが商売をしていたり、ドリンクや軽食の出前が来たり、着ぐるみのコメディアンが通りかかったりする平和なエリアだ。

　しばらくして、若干日が傾いてきたので、ミニゴルフをしに行くことにする。もう顔見知りになったスポーツ用具のお兄さんからクラブを借りて、芝生の上で、棒を振り振り歩き回る。暑い。熱帯ゴルフは一周したら、もうヘトヘトである。用具を返却したところで、卓球台が空いているのに気がついたのが間違い。熱帯卓球は、熱帯ゴルフより大変なのであった。あまりの暑さにそのままプールに飛び込む。ザバーッ。

　ぎゃっ。もう日があんなに落ちてきている。でもプールに浸かったので、頭ぐちゃぐちゃだ。一旦部屋に戻って、シャワーを浴びて着替えないと！！急がないと。わわわっ。超特急でシャワー、適当シャンプー、間に合わせドライヤー。ワンピースを頭からかぶって、外に出る。間に合ったか？

　何に間に合わせようとしているかというと、日没なのであった。到着の日に、暗闇の中で見つけたバー。ここ、夕刻の５時から８時までしか営業していないサンセット・バーであった。この場所で南シナ海に沈む太陽を眺めながら一杯やるというのが、我々の目論見であった。バーの周りにはすでにたくさんの客が集まっていた。夕日が沈むまで今しばらく時間がありそうだが、はたして席はあるのか？カウンター前でキョロキョロしている我々に、後ろから声がかかった。

　「あと二人分だけ席がありますよ。こちらへどうぞ」

　ニッコリ見せる白い歯、その真ん中がスキッ歯のウエイターさんだった。案内されるままについて行くと、カウンターをぐるりと回ったところにある夕日観賞ベストシートが、本当にあと二人分だけ空いていた。このバーの椅子はすべて沈む太陽の方を向いているのだった。ビールとマルガリータを注文。周辺の人々も、それぞれに片手にカメラ、片手にドリンクでスタンバっている。太陽は水平線に近くなると、急に落ちるスピードが増し、その動きすら見えるようだった。海の色が変わり、空の色が変わる。ホゲーッと見守るサンセット・ウォッチャー達。頭を去来する様々な思い。次第にあたりは暗くなっていった。

　向こうの方から太鼓の音が聞こえてきた。土着民風の扮装をした男達がファイアーダンスをしているではないか。ちょっとした余興の後、その火をサンセット・バーの周辺にある松明用ポールに灯して行く。我々の前にあるポールにもその一人が点灯にやってきた。松明がボッと燃え上がる。男がニコッと笑う。あ。スキッ歯。さっきのウエイターだった。

　その後、一度部屋に戻ったのだが、二人ともお腹が減らない。昼間のイタリアンがまだまだこたえている。レストランに出向く気になれない。夕食、抜かす？う〜ん。どうする？結局、ルームサービスでナシゴレンを一人分だけ注文し、部屋にあるヨーカンフルーツを剥き、これをもってディナー終了。所詮、大食漢からは程遠い人間、なにげに摂取カロリーの帳尻を合わせるのであった。