下調べの最初のあたりから、コタキナバルにあるリゾートホテルの中で、ターゲットはシャングリ・ラにしぼっていた。系列ホテルにおけるサービスのクオリティには定評があるし、私自身、他所でシャングリ・ラに滞在したことがあって、良いことは知っていた。で、コタキナバルには二つのシャングリ・ラがある。タンジュンアルとラサリア。ラサリアの方が、より豊富な自然に囲まれていてゴージャス度も高いのだが、私はタンジュンアルに決めた。なぜなら、タンジュンアルなら、空港からバスで１０分、繁華街までタクシーで１０分、離島行きのボートは敷地内の桟橋から出るから。ラサリアだと、どこに行くにもプラス一時間を覚悟しないといけない。リゾートにこもりっきりになるなら別だが、出かけるつもりなら、こっちだろうよ。

　バスから降りて、風の通り抜けるいかにも南国リゾートなエントランスを入り、天井で大きな扇風機がユルユルと回るラウンジで、ガイドさんがオプショナルツアーの勧誘を、もう一押ししてくる。日本人らしく曖昧な笑いを浮かべる私。

　「考えておきます〜」

　実は、すでに考えてあるし、申し込みも日本からしてあったりするのであった。さっさと鍵をもらって部屋に向う私ら。このホテルにはキナバル・ウィングとタンジュン・ウィングの二棟があり、日本のツーリストに申し込んだ段階ではキナバル・ウィング滞在となっていた。しかし、渡された鍵は、よりナイスな造りのタンジュン・ウィングのものだった。やった。グレードアップされとる。

　思い当たる節があった。リゾートでは夫婦滞在者は大きなダブルベッドを与えられることが多いが、同じマットの上に別の人が寝ていると、そっちの寝返りでマット全体が振動し、目が覚めてしまう。私は眠りに関しては、本当に問題の多い人間なのだ。だから申し込み段階で「ベッドはツイン」と言ってあった。しかし、旅行会社は「ホテルにリクエストは出しますが、確約はできません」と言う。そこで、出発の数日前にシャングリ・ラのHPを探し、確認メールを出しといた。すると、さっすが、シャングリ・ラで、翌日にはお返事メールが来て「お客様のご希望通りアレンジいたしました」と書いてあった。その結果が、タンジュン・ウィングのシーヴュー部屋に繋がったのだと思う。ツアーのパック料金安いのに、すまんの。

　部屋は広々としていて、一見キングサイズのダブルのように見えるベッドは、ちゃんと二つのマットレスから成り立っていた。バスルームがまたおしゃれなデザインで、広いバスタブとは別に、透明アクリルで囲まれたシャワーブースまで付いている。テーブルにはヨーカン・フルーツの盛り合わせ。冷蔵庫には無料のボトルド・ウォーター。窓の外は・・・・

　････真っ暗だった。 　シュミレーションでは、到着後、夕暮れのビーチサイドを１０分ほど歩いたところにある屋台村で夕食だったが、真っ暗ではちょっと行けない。ホテルのレストランリストを眺め、プールと海の間にある「ココ・ジョーズ」で何か食べようという話になった。うどんと機内食のダブル昼ごはんがこたえているので、アラカルトでチョコチョコッと何か。スーツケースから南国向けの服を取り出して着替え、外に出る。

　「申し訳ありません。只今、満席なので、３０分くらい後なら」
　「ぐげっ。それでは、その頃また来ます」

　その間、そこいらを歩いてみることにした。暗がりの中にいくつかの施設が見える。あの海に向けて突き出した先っちょにある小屋みたいなものは何？タイマツが灯っている？行ってみるとバーだった。ちょうどいいので、ビールをもらって、潮風に吹かれながら、グイッとやる。どひゃ〜、喉にしみわたる〜〜。絵に描いたようだ〜。ビールの宣伝みたい〜。南国ビール、最高！

　その後、最初のレストランに戻る。波打ち際のロマンチックな席に案内され、メニューを渡される。うっ。ロマンチックすぎて、メニューが読めん。二人とも年齢が目にキているため、屋外の暗がりでは、メニューを握る手に汗が・・・・。それでもやっとグリルド・ビーフとマスカルポーネ入りサラダを注文。一人前をシェアする旨を伝える。ビールはさっき飲んだので、ロング・ドリンク二種類を頼む。

　ビーフもサラダもとてもいいお味だった。付け合せもポテトとコーンがマッシュしてあって、程よい塩加減。パンにはやっぱりバージンオイルがいいわよね。取り分けながら食べていると、突然、風が強くなった。スタッフがなにやらバタバタしている。ポツ、ポツと水滴を感じた段階で、我々のテーブルの両側をウエイター二人がサッと持ち上げ、何の説明もないまま、屋根のあるところまで料理ごと突進して行った。あ〜、私のフォークが落ちた〜。そして空から、ザザザ〜〜ッ！！料理は間一髪でスコールから逃れたのであった。スタッフ、慣れてるわ〜。こういうのって、ホント、南国に来た感じがヒシヒシとするわ〜。いいレストランだわ〜。

　「チェック・プリーズ」

　ひいい〜、お値段もいいレストランだわ〜。物価の安いマレーシアのはずだが、東京のホテルで食べるのと、どっこいどっこいなお勘定額であった。さっすが、シャングリ・ラ。