米国でサブプライム・ローンがこけ、リーマン・ショックが引き金になった世界同時経済危機。各国が様々な景気浮揚策を発動し、麻生政権も大盤振る舞いをした。「へっ？」と頭をかしげたくなる策は多々あったが、話題として最も取り上げられたのは「定額給付金」と「高速道路１０００円均一」だったと思う。各家庭にバラまかれる現ナマの使い道であるが、拙宅では二人分２４０００円を景気浮揚のため、パーッと使うことにした。近場の温泉一泊旅行がいいんでないかという話になった。そうなると車で出かけるから、高速道路１０００円対象になって、さらに良さそうに聞こえるが、割引きは土日祝日限定なので、週末は大渋滞のドツボが予想される。それはとってもイヤだ。

　うちはタラが危機管理ネコなのだが、私がまた危機管理ニンゲンなのだった。何事も出たとこ勝負が好きでないので、事前に策を練る。良さげな宿泊先を検討しながら、ふと６月に仕事を休める金曜日があることに気がつく。おお、金曜に東京を出れば、高速は通常料金だが渋滞はないはず。旅館は金曜宿泊なら土曜宿泊より数千円安い。観光スポットも空いていること間違いなし。土曜に帰京するぶんだけ１０００円均一を使えば楽勝じゃなかろうか。オットも金曜有給休暇、問題ナシということで日取り決定。

　東京から数時間で行ける温泉地はたくさんあるが、長野方面や伊豆方面は比較的最近行ったのでパス。　２０年くらい前に行って以来の栃木県の鬼怒川温泉を調べ、ここだと思われる旅館に予約を入れた。定額給付金から若干足が出る料金だが、心のこもったおもてなしをするとネット上の評判がいい。小規模旅館というのも新鮮。周辺でどういう観光をするかもネットで調べ倒す。後は当日の天気だが、梅雨の時期だし、降られても文句は言えまい。一応、観光プランは晴天バージョンと雨天バージョンを考えておく。

　出発前日は雨であったが、当日朝は薄曇りであった。オッケー、オッケー。朝９時、駐車場に行くと、車があった。（あたりまえだろうと思った人は、ココを参照のこと）　荷物を積んで、出発。都内を抜け、浦和から東北自動車道に乗る。道路は絶好調に空いていて、二時間くらいで宇都宮インターまで来てしまった。そこで高速を下りて旧道を走る。日光街道（国道１１９号）には左右にうっそうとした古木が茂り、ところどころ緑のトンネルができていた。ワラジを履いてスゲを被った昔の旅人の姿を想像してみる。大名行列も通ったのだろう。日光宇都宮自動車道を通るよりは時間がかかるが、道は悪くない。お薦め。

　今市あたりで右に曲がり、国道１２１号を北上する。しばらく行くと日光江戸村だの、東武ワールドスクエアだの恐竜館だの、観光客向けの看板がボコボコ出てくるが、すべて素通りし、宿泊予定の鬼怒川温泉までも通り過ぎて、「観光プラン：晴れバージョン・その�@」へと到達した。駐車場で、ちょうど１２時の時報が鳴った。

目次へ　次へ