「こんなにおいしい焼き芋は食べたことがねえな〜」
　「こら、サツマイモって味じゃねえよな」
　「うめえ〜、家のもんにも食べさせてやりて〜」
　「おばちゃん、この芋、生でも売ってる？」

　テーブルとテーブルの間はすごく近かったので、思わず、話しかけてしまった。

　「そんなに美味しいんですか？」
　「おいしいよ〜。最高〜」
　「ええっと、皆さん、地元の方ですか？」
　「地元の回し者じゃないよ。俺ら福岡だから〜」
　「でも、九州圏なんですね・・・」
　「お宅ら、本州なの？」

　私、「本州」というくくりでまとめられたのは初めてであった。彼らは焼き芋をほおばった後、種子島から入荷したばかりというその芋を、段ボール二箱買って出て行った。支払い４０００円！　私は、お店のおばちゃんに「焼き芋、小さいの、一個ください」と言ってみた。

　普通の焼き芋であった。おばちゃんの説明では「たまに入る種子島の芋がおいしいんだけど、さっきの人たちが焼いてあるのを全部食べて、生を全部買ってった」とのことであった・・・。お〜い、福岡〜。

　それからまた走って、鹿児島市内に入った。まずは城山展望台に登る。小さい山だが、一応山なので、駐車場が上にあったのが助かった。ここは西南戦争で、西郷隆盛が率いる薩軍が政府軍と最後に戦った場所。昔は島津家の鶴丸城があったそうな。

　展望台から、桜島をバックに錦江湾（きんこうわん）と鹿児島市街地を見下ろすことができた。曇りだったので桜島の上の方は隠れている。それから山を下っていたら、左手に「西郷洞窟」の看板が見えたので、車を止めた。ここは、戦況著しく不利となり、追い詰められた西郷隆盛と数人の部下が立てこもった洞窟で、西郷どんはこのすぐ近くで被弾したあと、部下の介錯で亡くなっている。享年４９歳。そんなに深くもない普通の暗い横穴であった。

　次に「黎明館」に寄った。鹿児島の歴史等を学ぶことができる大きな博物館である。なかなか見ごたえがある立派な展示であった。オットが「ちょっと、ちょっと、大久保利通のお母さんの名前、知ってる？」と呼ぶ。そんなん、知らんがな。指さす先にある大久保家の家系図。母の名は「ふく」。すかさず写真を撮って、Y子さんに送信した。あ。ここ、撮影禁止って書いてあるやん・・・。

　黎明館を出た後、巨大な西郷像を見てから、今日の宿に向かった。鹿児島中央駅のすぐ近くにあるシティホテル、狭い洋室のカーテンを開けたら、見事な屋根&壁ビュー。でもこの場所は利便性が高いのでオッケーだ。

　夕食は外に出るわけだが、昨夜が鹿児島の郷土料理で、おそらく明日も郷土料理なので、この日はなんか違うものにしようという話になった。駅ビルにアミュプラザというのがあって、そこに各種レストランが入っているので、プラプラ歩きながら眺めていて、餃子に引かれた。タイガー餃子会館。これに入ってみたら、あらま〜、餃子が美味しい〜。餃子以外の中華料理も美味しい〜。ここって、鹿児島の名店かなんか？　スマホで検索したら、発祥が浅草で全国展開を目指しているチェーンだった。餃子をファミレス的に提供している感じがした。オッサン臭くない餃子店だ。

　アミュプラザは、東京の繁華街にある駅ビルとなんの違いもなく、流行りの店が軒を並べ、買い物客が行きかい、繁盛しているようであった。屋上には巨大観覧車がそびえている。建物前にはクリスマスイルミネーションが輝いていた。人口６０万人くらいの大都市のすぐそばに、活火山が鎮座しているわけだ。なかなか豪儀なことだ。

　三日目の朝、ホテルのブッフェ朝ごはんを食べてから、加治屋町の散歩に出かけた。この辺りは西郷さんが生まれ育った場所である。甲突川（こうつき川）に沿って整備された「歴史ロード」を歩いて「鹿児島市維新ふるさと館」に入った。この中で上演されている「維新への道」では、明治維新を支えた偉人達の功績や、幕末の薩摩の様子などをドラマ仕立てで見せてくれる。実物大の西郷さんロボットや大久保利通ロボットが出てきてしゃべってくれる。わかりやすい。

　更に「鹿児島スチューデント、西へ」を見る。１８６５年に薩摩の若者１９名が英国に留学した経由を、これまたわかりやすく見せてくれる。西洋の技術を取り入れる必要があると、彼らが薩摩藩から密かに送り出されたのは、まだ鎖国の時代。幕府には内密で出国したのであった。知らなかったわ〜。

　この後、西郷隆盛生誕の地に行こうとしていたら、オットが体調不良を訴える。腹痛がするらしい。珍しいことだ。ホテルのすぐ近くだったので、一旦戻って休息。１１時のチェックアウトまで、部屋でおとなしくしていて、本人が「もう大丈夫」と言うので、次の目的地、仙厳園（せんがんえん）へと出発した。

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