海外旅行をするには、個人旅行と、パッケージ・ツアーという手があるが、今回はパッケージである。ホテルと飛行機がパックになっていて、ご飯とか観光とか余計なものは何もなし。団体行動をしなくていいのに、団体割引が効いているので、自分で手配するよりお得だと思う。空港からホテルまでの足も確保されているし、何よりも面倒が省けてよろしい。

　今回、各社のパンフを比較検討して、選んだ某大手旅行会社のパックは、ホテルはもちろん、航空会社も自分で選べるという企画だった。ノース・○エストだと早めに申し込んだ場合、一万五千円の割引ということだったのでそれにしてみた。J○Lだとベガス直行便を出しているのだが、最近、J○Lはなんだか信頼がおけないし、直行のせいか割り増し料金もつく。「ロス経由でいいや」とナショナル・フラッグをあっさり袖にする。

　電話で申し込んだら、予約はできたものの、旅行会社のお姉さんが、申し訳なさそうな声でこう言った。

　「旅行代金には燃油サーチャージが加算されます」
　「なんですか、それ？」
　「原油が高騰しているので、その分を乗客に負担してもらうシステムで、出発時の原油相場でサーチャージは変わります。どの旅行会社のどのプランに申し込んでも同じ額が加算されるのです。ちなみに現在はお一人様、２４，４５０円です」
　「に、にまんよんせんよんひゃくごじゅーえんですかっ！」
　「はい・・・、申し訳ございません」

　この段階で、負けなのか？

　更に、旅立つ直前、仕事仲間で最近米国旅行をしてきた人と雑談していたら、こういう情報が。

　「知ってます？　ノースは機内のアルコールが有料になったの？ビールは５００円払って飲むんですよ。５ドルでもいいんですけどね。この４月かららしいっす。他の会社はビールくらいタダで飲ませてくれますよね〜」

　げっ。やっぱ、負けか？ せめて、ビールを頼むときは、ドルでなくて円で払うことにしよう。一ドルが１１５円とすると、一本につき７５円安くなるな。とほほ。

　さて、成田にては、申し込んだ旅行会社のカウンターでチェックインすることになる。グループツアーというのは、席のリクエストができないというのが相場のようだ。オットのギックリ問題があるし、腰を曲げて入らねばならない奥の席でないほうがいい。私もトイレに行くのに他人に気兼ねするのがイヤだ。ダメモトで尋ねてみる。

　「あの、通路側だと助かるんですけどぉ〜」
　「もう、お席は決まっているんですけどね。ええっと。あ、一枚は通路側になっていますから、大丈夫ですよ」

　助かった。ちょっと勝ったかも。三人並ぶ席のうち、窓側に誰かが座ることになる。小柄でおとなしい人だと更によい。

　機内に入ってみたら、我々の席の奥にはすでに外国人女性が座っていた。で、でかい。狭いエコノミーのシートが身体だらけ。あまつさえ、彼女の肉の一部は私のテリトリーにはみ出しているではないか・・・。ま、仕方あるまい。この人がトイレに立つときは、二人とも立ち上がって通路に出てあげるしかない。ロスまでの９時間、三回くらいは覚悟しておこう。席の件はプラマイゼロかな。

　だが、この女性は恐るべき膀胱キャパの持ち主だった。ジュースを飲んだり、コーヒーを飲んだりしていたにも関らず、９時間の長丁場を、一度もトイレに行かなかった。　与えられた物はさっさと食べ、食べたらひたすら寝ていた。あらゆる意味で大物だった。席の件はやはり勝ちかも。

　ロサンジェルスからラスベガスへの飛行はほんの一時間なので、特筆すべき事柄はない。乗換えもスムースで無駄が少なかった。ノース・○エストは定刻出発がモットーらしく、９時４５分発となっていたら、９時４５分には乗客全員が着席していて、飛行機は滑走路へと向かっているのである。搭乗手続きをしたのに、免税店などでダラダラしているヤツは置いていかれるんだそうだ。素晴らしい。

　ベガスでの時間はあれよあれよという間に流れ、もう帰国日である。帰りの切符は、出発時に成田で渡されていた。席も確定していた。そのアルファベットから推測するに、今度は三人掛けの窓から二つのようだ。でもオットの腰も多少は良いようだし、文句を言っても始まらないので、通路側に座るヒトが細身で寛容な旅行者であることを祈ってみる。帰りは気流の関係で１０時間程度かかることだし。

　ロスでの乗換え時、発着時間のモニターで我々の便を確認したら、ゲートナンバーなどと共に、「EARLY」と書いてあった・・・。「DELAYED」と「CANCELED」は目にしたことがあるが、アーリィはお初だった。只者ではないわ、ノース・○エスト、予定より早めに飛ぶつもりらしい。

　置いていかれると困るのでさっさと乗り込んだら、我々の席の通路側には日本人青年が座っていた。細身で育ちのよさそうな身なりだ。オッケ。彼は寡黙だったが、たとえば食事が終われば、我々のトレイも率先して下げてくれ、都合の良いことに、あんまり寝ないタイプだったので「すいませんねえ〜」と何度もトイレ方面に出させてもらった。勝ったかも。

　食事はハッキリ言っておいしくない。オムレツの隣に甘〜いマフィンの朝食などという組み合わせにゲンナリ。夕食と朝食の間に、クッキーサンドになったアイスクリームを手渡されたのも意表をついていた。だが、そもそも飛行機での食事に多くを期待してないので、これをもって「負け」と言うほどの問題ではない。オットが「ビア、プリーズ」と言って５ドル出していた。そこは５００円を出すべきところだから、軽く負けているのだが、私のサイフじゃないので、ま、いいや。

　ところで、欧米系の航空会社を使った人は皆さんそうおっしゃるが、客室乗務員の年齢は高い。若くてきれいな女の子がニッコリしてくれるのはアジア系の会社だけ。私が乗った飛行機のアテンダントはざっと見て平均年齢が５０を超えていた。「孫がいるな、確実に」と思った瞬間もあった。オジサン乗客はご不満かもしれないが、私は自分自身が馬齢を重ねて働いている身なので、「これが正しいのだ」と思った。年齢を食っても仕事は必要なのよ。「もうオバサンだから、辞めなさい」というプレッシャーがかかる職場は間違っている。仕事は結婚までの腰掛けって時代はとっくに終わってんのよ。

　１６時４０分に成田到着予定だった飛行機は、１５時３０分頃、滑らかなタッチダウンをした。

　この勝負はトータルで見て、私の勝ち！

　おことわり：飛行機の画像が一枚もなかったので、挿絵はノース・○エストのHPから借用させていただきました〜。背景はニューヨークのような気が・・・。知恵使って反転画像を作ったら文字も反転してるし・・・。 　 　

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