駅レンタカーで車を借りて、目指すは八幡平（はちまんたい）。降りた駅は田沢湖のそばだが、今日は湖ではなく、ひたすら山ドライブの予定なのであった。国道３４１号を北上し、八幡平アスピーテラインを目指す。空は快晴で、周辺は自然が実に豊かだ。田植えが終わったばかりの田んぼ。小花の咲き広がる野原。濃い緑の森。道路がやがて登りになる。

　山肌を縫うように走るアスピーテラインは、快適なドライブウエイだった。しっかりと整備された道路で、走っている車が少ないというのが嬉しい。そして、標高が上がるにつれて植生が変わっていくのがわかる。広葉樹が主だったふもとから、次第に針葉樹が増えていき、やがて周辺に雪が出現する。５月末であるから、道路は除雪されているが、道路脇にはまだ雪の壁すら見られる。ワインディングロードではあるが、ヘアピンカーブなどはない。快適にダーッと走る。レンタカーがマーチで馬力不足なのがやや難。

　どこもかしこも大自然がてんこもりだが、八幡平ビジターセンターあたりから八幡平山頂レストハウスまでのおよそ２０分の景色が特に雄大。八幡平は高い山が連なっていて、「平」という文字が使われている通り、上の方がかなりフラットだ。普通の山のように、ターンターンで登ってすぐ下るということにならない。レストハウスのある見返し峠からぼちぼち下り始める。ここから進行方向右手に岩手山が出現する。堂々とした山で、片側の稜線がなだらか。半分だけ富士山っぽく、反対側の稜線は険しい。そして道は岩手県に繋がっていく。

　特筆すべきは、八幡平アスピーテラインには俗っぽいところが全く無いということだ。土産物屋とか、コンビニとか、ラーメン屋とか、何もない。道路標識以外の看板もない。自然そのまま。下調べしたときに、「山頂レストハウス以外に食べ物屋はありません」と書いてあるのを見たが、本当にそう。そのレストハウスでもメニューはうどんとカレーくらいしかない。うどんを頼んだら、冷麦みたいな細い麺が頼りなくお汁に浸かっていた。そうであった。うどんと言ったら、ほぼ間違いなく稲庭うどんが来るという土地柄なのであった。

　絶景のアスピーテラインを走り抜け、松尾八幡平ＩＣから東北自動車道に入った。岩手県を高速で南下して、盛岡ＩＣで国道４６号に下りる。で、また田沢湖方面へ。そこから宿泊予定の乳頭温泉方面に進む。前方にそびえるあの大きな山は秋田駒ケ岳。およそ五時間のドライブでループ状に秋田県の山側を回ったことになる。なんか達成感あるわ〜。