第百二十四話  パープルですかい

 半年ほど前、東京スカイツリーが開業した時に、オットが仕事関連の人から優先予約のできる招待券を二枚貰ってきた。オープンしたては混むだろうし、六月は雨だし、その後は夏休みの繁忙期だしと、ずいぶん先になるが、秋晴れを狙ってネット予約しといた。その指定日時が10月13日午後四時。さ〜て、晴れるかな?

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 ・・・晴れた。予約時間の少し前に、現地まで行くと、このチケットのご利益は素晴らしく、並んでいる人々をすべて抜いて脇からいきなりエレベーターに乗ることができた。ディズニーのファストパスみたいだ。エレベーターはシュルル〜ッと350メートルほど上昇し、展望デッキに到着。おお、よく見えるぞ。あそこが東京湾、あの白いのが東京ドーム、浅草はすぐそこで、眼下を流れるのは隅田川。見学者は立錐の余地がないというほどではないが、かな〜り多い。

  あと100メートルくらい上に天望回廊というのがあり、ここに行くにはプラス千円。スカイツリーはいろんな意味でバカ高い。家族連れで来たら、見学だけで万札が飛ぶ。が、我々はそもそも350メートルまでタダで昇っているので、心に余裕がある。追加チケットを買って、更に昇る。やはり千円札の出し惜しみをする見物客が多いのか、こっちのフロアの方が空いていて、窓に張り付いてゆっくり外を見ることができた。沈みゆく太陽を地上451メートルから眺める。

 ところで、私はちょっと前にデジカメをネットショッピングし、その色がパソコンのモニター上ではブルーっぽく見えたのに、届いたパッケージを開けてみたら、もろパープルで、ちょっと驚いた。私の好きな色はブルーなんだけどね。確認が甘かった。そのカメラで遠景を撮りまくる。ふふん、色はともかく、使いやすいわ、このカメラ。

 その後、ツリーの隣にあるビルの30階で夕食。モダーンな釜飯屋さんであるが、ここも予約しておいてよかった。そのフロアのあらゆるレストランの前に、お食事難民が発生していた。土曜の夜だしな。釜飯屋はガラス面が多くて見晴しが良いものの、スカイツリーが見える方向ではなかった。ビールを飲みながら前菜をつついていると、夜空の向こうに花火が上がった。え?10月に花火?

  近くのお客さんが「あれは千住の花火ですよ」と教えてくれた。そう言えば電車で来るときに浴衣の人を見かけたわ。なんというゴージャスな偶然であろう。半年前に予約したのが花火の日で、前日に予約したレストランが花火ビュー。花火大会は、デザートのソフトクリームを食べ終わる頃まで続いた。

 ところで、我々は駅からスカイツリー直行で、その後、隣接ビルに直行だったため、タワーそのものを外から眺めることを、この時点で、全くしていなかった。最後に全貌を見て〆ねばならぬ。スカイツリーの姿を求めて、レストランフロアをぐるりと回る。確か、ライトアップは日替わりでブルーかパープルになるのよね。今日はどっちの日かしら?ああっと、このカメラ、夜景モードがあるのよね。ええっと、このボタンをこうすると・・・。あ。廊下の突き当りに人だかりが。

 窓の向こうにドーンとそびえ立つスカイツリーのイルミネーションは、やっぱりパープルだった・・・・。

2012年10月14日

* レストランのあるビル( 東京ソラマチ)は近すぎてツリーの上半分か下半分しか撮れなかったので、最後の画像は道路から撮ったものです