真っ白でキメ細かい砂、やさしいカーブを描く波打ち際。数えられるほどしか人がおらず、ゴミ一つ落ちていない、静かで美しい極上の浜だ。白浜に対して持っていた先入観が完全に打ち砕かれる。温泉街を後ろに控える浜辺と言えば、関東では熱海が有名だが、全然違うと思った。猥雑さがどこにもない。ここって、日本の海水浴場？どちらかと言うと、グアムかサイパンのビーチのようだ。

　「グアムサイパンに行くくらいなら、ここの方がいいね」
　「東京から飛行機でヒョイと来られるビーチリゾートとしては、最高レベルじゃない？」

　９月の中旬で、しかも夕暮れ時だったからかもしれない。８月の昼間だったら違う印象になったのだろう。が、国内で考えても、私が訪れた中で白良浜のランクは、沖縄の離島の次くらいになりそうだった。いい所に来た。本命の宿泊地は当てたような気がする。

　まだボンヤリ明るいうちに露天風呂へ急ぐ。朝と夜で二箇所のお風呂は男女入れ替わりになるそうで、夜は眺望の湯「潮風」が女性用であった。広々として清潔な内風呂から、露天風呂に足を踏み出す。スリガラスで視界がさえぎられた向こう側に出ると、先ほどの浜が見下ろせた。夜で良かった。向こうのホテルに双眼鏡を持った人がいればこの位置は丸見え。オットが入った一階にある磯辺の湯「松風」は波音が聞こえるものの、竹塀で周囲が囲われていたので、それはないということだった。

　夕食は二階のお食事処でということだった。「こちらのお部屋でございます」と案内されたところが、なんと広々とした個室。どのくらい広々としているかというと、十名様の宴会が充分開催できるくらい。長いテーブルの中央に食事の用意がされている。窓の向こうは白良浜。何事にも用心深い私は、ここのHPで食事処が和室と洋室とあると知り、事前に「テーブルと椅子だと助かります。選べれば、そのようにお願いできますか」とメールを出しておいた。そのリクエストが効きすぎたのかもしれない。

　すでにかなりのお料理が並んでいたが、お姐さんが言うには「これから五品出て、その後がお食事とデザートになります」とのこと。すごい。今、出ているだけでもお腹が一杯になりそうだのに。心をくだいた美しい盛り付けに心が暖まる。舌で味わう前に目で味わうのが日本の伝統というもの。料理の一つ一つに創意工夫があり、たとえば、鯛の薄切りが並べてあったので、お刺身かと思ったら、「鯛しゃぶでございます」と来た。和風一点張りではなく、洋風の料理も混ぜてあって飽きない。地ビールを注文し、そのあとはワインに移行。幸せ。

　翌朝、ご飯前に美しい浜をまた散歩しようと外に出たら、地元のお婆さんと遭遇し、突然、「円月島に行くんですか？」と訊かれる。行くつもりではなかったのだが、その人が「そこからバス通りに出て左にちょっと行けば円月島が見えるから」と教えてくれたので、歩いてみたら、本当にすぐだった。近道を教えてくれたのだろう。昨日とは逆の方向から朝の円月島を眺めた。白浜の人もいい人だ〜。

　朝ごはんも昨夜と同じ素敵な個室だった。お姐さんに「ここのお食事処はどこもこんな感じなんですか？」と尋ねてみたら「個室で予約なさればそうです」との返事。私ども、個室で予約したつもりは全然ない。パックツアーの一部である。いいのか？朝食の工夫も色々あって、気に入ったのは、竹を割った入れ物に魚のすり身が盛り付けてあり、それを竹べらで湯に落とし、自分でお吸い物を作るというもの。ご飯も白ご飯と茶粥が用意されていた。全部食べたら絶対太るよ。

　お風呂が交代になっているので、もう一度入浴し、今度は松風の湯を楽しんだ。ああ、居心地抜群の宿だ。大人の客にはこのくらいの規模の旅館がいいかも。是非また来たい。飛行機でヒョイだものね。空港はすぐそこだし。チェックアウトの前にアドベンチャーワールドの前売り券をフロントで買う。こうすると少し安くなって、しかも行ってから切符売り場に並ぶ手間が省けるとネットに書いてあったので。

　アドベンチャーワールドに乗り込む前に、観光スポットの千畳敷と三段壁に寄った。海岸の表情も様々だ。柔和で女性的な白良浜から少し走っただけで、なめらかな白い岩肌が拡がる千畳敷、そしてゴツゴツと黒い岩が猛々しい三段壁。白浜の海は面白い。

　さて、最終日のメインイベント会場、アドベンチャーワールドに到着。時刻は９時を少し過ぎたところ。ゲート周辺に人だかりができている。