タラは、生後二か月でうちに貰われてきたのが六月で、 １５歳で旅立ったのも六月だった。

　亡くなった翌年、 命日にオットがアジサイの花束を買って来た。 駅ビルに入っている花屋にあったアジサイを「知っている花だったから」買ったと言う。 この人が知っている花はとっても少ない。

　次の年も命日にアジサイを買って来てくれ、タラを偲んだ。 うむ。それでは６月１８日を「紫陽花忌」と呼ぶのはどうだろう。

　私は私で、没後三年を迎えるにあたり、 タラを偲んで事前に買い物をした。「髭山」という名の手作り置物で、 本来の用途は、ネコの抜けたヒゲを刺しておくという非常にニッチなもの。 木製の台に、ホワリと丸くて小さなネコのお尻のようなクッションがついている。 卵くらいの大きさで、茶トラとか、三毛とか、模様を選ぶことができる。 これのネット販売が人気で、たまに販売される時は熾烈な争奪戦になる。

　一回目、予告された販売時間を待って、ササッとカートに入れたものの、 クレジットカード番号の入力が終わったら、「完売」の文字が浮かび上がった・・・。 なんかのコンサートチケットみたい。作っている人が一人で制作数に限りがあるからね。 二回目の販売では、全ての入力を準備万端の早打ちで行い、なんとか購入が叶った。ヒャッホイ。(*^^*)

　タラはもう本体が亡く、取り置きのヒゲも無い。だからヒゲを挿すわけではない。 遺影の脇に置かれた髭山、うちでは仏具の扱いだ。 正しい仏壇であればリンを鳴らすところだろうが、宗教心皆無の私は、 こんもりとした白茶の小山を指先で撫でて「タラ〜、元気〜」と言ってみる。死んでるけどな。

　今年の命日、私はこの仏具を買って準備万端だったが、 オットはゴルフに行ったりしてすっぱり忘れていた。「 今日でちょうど三年だよ〜」とリマインドしておいたら、 翌日の帰りに大型スーパーに寄ったらしく、フクのおもちゃと、人間のオヤツと、 タラへの花束を買って来た。おお、一日遅れだが、三年目の紫陽花記念日だ。

　「フク〜、新しいジャラシだよ〜。ええっと、サクランボは冷蔵庫へ。 さて、花瓶を出してアジサイを・・・」

　バサバサ。

え？　 ひまわりのブーケ？　アジサイ売ってなくて、 それ以外にオッサンの知っている花がヒマワリだったと？

　・・・今年は「向日葵忌」ってことで。

掲示板へ　 目次へ　 ←次を読むならクリック！