２００６年ゴールデンウィークに、はるばる飛行機に乗ってタラ見物に来たカップルのことを書かねばなるまい。「ネコでっせい！」の熱心な読者にして、最高齢ファンと推察される二人・・・うちの両親である。

　熱心な読者と言っても、この人達はパソコンを持っていない。パソコンを与えても操作困難が予想されるので、時々新ネタをプリントして郵送して読ませている。結構楽しみにしているらしい。タラがうちに来てから四年近くになり、その間、両親が上京することは何度もあった。だが、同じく首都圏内にある姉宅に逗留し、我々は姉宅での宴会に参加というパターンが常であった。なぜなら、姉宅はゆとりの一戸建て＋孫三人＋ワンコ一匹という好条件だからである。

　例によって姉からの電話。

「ジジババがゴールデンウィークに来るって〜」
「あっそ〜」
「お宅、暇ぁ〜？」
「暇〜」
「タラを一度も見てないから、ぜひ見たいって言ってるけどぉ〜」
「ほへっ？」

　そんなわけで、ジジババはまず姉宅に行き数日逗留、その後、姉一家とともに拙宅に移動して宴会をし、ジジババのみこっちでも一泊してもらうというプランが決まった。

「皆で八人になるけど料理大丈夫〜？」
「お〜、給食のオバサンになったつもりでやるわ〜」

　料理は大丈夫と思うが、問題はうちの仲居のタラネン子さんである。遠来の客だからって斟酌してくれないだろうな、このバカは。ポン太のときはよかったなぁ。側にはべってくれて、芸者のポン太姐さんだったものなぁ。いまさらタラの性格は変わらないから、せめて風呂にでも浸けて、見た目の改善でも計るか。

「うにゃ〜！！！うぅ〜ごぉ〜！！わにゃにゃ〜！！」

　大ボリュームの悲鳴に、近所の人に通報されなければいいがとびくびくしつつ、タラの洗濯終了。タオルドライしてやろうと思うも大暴れなので、季節外れだが電気ストーブON.。数時間後にセルフドライができた。おお、白がピカピカだ。でもタラは洗濯しなくても白がピカピカなのだった。意味ないじゃん。ま、気は心ってことで・・・。

　母が、お土産を持つのが重いから、先にクロネコで送るという。そして段ボールが到来。名産のカマボコとか饅頭とかの間からカルカンのパウチが二つ出てきた。タラ〜、あんた、気ぃ遣われてるで〜。

　当日、私は給食のオバサンとして奮闘しつつ、和室を宴会仕様にセットアップ。タラの顔に不審感が漂う。こういうことって過去に何度もあったわね。デジカメ片手にネコ追いかけてキャーキャー言う女の団体が来るときってこんな感じよね。

　ピンポーン！

　タラの姿は消えた。ベッドの下、衣装ケースの奥地へと消えた。

「あら、タラちゃんは？」
「タラちゃん、どこ？」
「おい、タラ君にマタタビ持って来たぞ」

　宴会は仲居さん引きこもりのままスタート。途中でちらちら出てくるのだが、するとまた

「タラちゃんが出てきた〜」
「携帯で撮る〜」
「おい、マタタビはいらんか」

　で、タラ、引っ込む。この繰り返しはネコバカ集会と同じである。違いは年齢性別が多岐に渡っていることと、突き出すカメラがフィルムカメラだったりすることくらいだ。

　やがて、姉一家が去り、老父母が残った。客が二人だけならタラも大丈夫かも。ベッドの下に篭城するのも４時間もやりゃ飽きるだろう。

　読みが甘かった。風呂上りの父母はビデオで「タラの成長記録」を見るハメとなった・・・。

「これ、来たすぐの頃ね。もう、顔、尖がってるでしょ」
「これ、四ヶ月くらい。身体、長くなったでしょ」
「これ、もう今のタラと同じくらいね。こんな感じだからねっ、わかった？」

　タラはいつも私と一緒に和室で寝ている。だが、うちのマンションは仕様が古すぎて、あちこち段差のバリア・アリーだし、ベッドの部屋は特に使い勝手が悪いと思ったので、和室を両親に譲って我々が洋間へ。私が寝たらタラもベッドの下から上へと上がってきた。タラ、そんなに私が好きか？

　深夜に廊下を爆走するタラ。皆が寝静まったところをソロソロと探検していたら、折悪しく、父がトイレに起きたらしい。オット、踏まれる。

　朝になったら、それでも用心しながらリビングに出てきた。部屋全体に目配りをしながら進み、誰かが動くたびに軽く跳ねる。私が抱っこすると全身で突っ張っている。突っ張らかったタラを一応撫でてもらう。

「ほれ、手触りはいいでしょ？」
「おお、長いネコじゃのぉ〜」
「もっとすごい顔するかと思っていたらそうでもないのね〜」

　そう言われてみれば、今回は鬼の形相のシャーッがなかっただけ、ましなのか？お客様の出立ちにもタラのお見送りはなく、私は大都会での乗換えに不安がある両親を羽田まで送り届けた。出発ゲートに入っていく二人を見送った後、帰宅したら、仲居さんはソファの上で気絶寝していた。

目次へ　 ←次を読むならクリック！