プロの仕事：その１

　浴室内にランドリーポールを付けることは決まっていた。メーカーにはもちろんそういうオプションが存在する。それプラス、私は浴室入り口から洗濯機上にかけての天井近くに一本ほしかった。なぜなら、お風呂にお湯が入っている雨天時でも、干したい物は干したいからであった。リフォーム以前も、アマ工作員の手で突っ張り棒をアレンジしたものをその場所に渡していた。頼りない細い棒がヘロヘロと頭上にあり、その下で服を脱ごうと手を伸ばすと、その棒が邪魔だったりする、そんな代物であった。

私：　「この位置にもランドリーポール、付きますか？」
K：　「付きます。両方にポール受けを固定して、着脱可能なヤツ」

そして、工事中のある時、奥の部屋にいた私に、イケメン助手Sさんが声をかけた。

S：　「ハンガー持って来てもらえます？」
私：　「へ？」
S：　「洗濯物を干すときのです。場所を決めますから」

　そして、洗濯物用ハンガーを手にした私が、スッと腕を伸ばしてやっと届く高さが測定された。低すぎない高すぎない、オーダーメイドのランドリーポール（泣）。完璧だ。

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　アマの仕事：その１

　浴室カウンターの色指定違いの他にも、実は代理店のオーダーミスがあった。それは浴室ドアの幅で、注文は７０センチだったのに、届いたのは８０センチだったのである。しかし、幅が８０あってもギリギリ設置できるという話だし、私は大きく開くのはいいんじゃないかと思ったので、そのミスは追及しないことになった。そんなわけで、ドアの開口面積は予定より大きくなった。お風呂部分の工事が終了して、しばしあってから、Ｋさんが言い出した。

　K：　「トイレをバーンと開けると、お風呂のドアのガラス面に、トイレドアのノブが当たっちゃうんですけどね」
　私：「あ〜、お風呂ドアが大きくなったせいで〜。ま、トイレだからそんなにバーンとは開けないだろうけど・・・」
　K:：　「万一、バーンと開けたときのために、ここいらに戸当たりをつけといたほうがいいと思うんですよ」
　私：「そうしましょう！」
　K：「古い浴室にこういう戸当たりがあったんですけど、コレだとサイズが合うんですけど」
　私：　「き、汚い・・・」

　３１年間、浴室内にあった戸当たりは、金属部分は磨けばなんとかなりそうだが、白いゴム部分が劣化して茶色になっていた。せっかく周辺がキレイになるのに、ここだけボロいのはイヤなので、私がホームセンターに行き、新たに類似品を買って付けてもらうという話になった。で、探したものの、ぴったりのサイズが見つからない。さ〜て、どうする？　アマ工作員はその夜、背中を丸めて作業に入った。

　私：　「Kさん、戸当たり、コレでお願いします」
　K：　「は？　コレ、もしかして、古いヤツのゴム部分を入れ替えたの？この、白いとこ、もしかして・・・」
　私：　「ハイ、消しゴムです」

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　 　プロの仕事：その２

　マンションの狭い廊下には「電話置き場」があった。壁が３０センチくらい引っ込んだニッチ部分。黒電話の時代はこの幅で問題なかったのだろうが、今の時代、ファックス付き電話機は納まりきらない。うちではうすらデカい親機は別の棚に置き、ここには子機が置いてある。しかし電話回線はここにしかないので、ネット接続用の機器とかＩＰ電話関連の機器とか、なんやらかんやらが、このニッチに並んでいた。だが、コンセントはなかった（笑）。マンション完成当時の電話は、電源なしで使えたせいである。これまで、隣の洗面所から床を這わせてコードを伸ばし、タコ足で電源を取っていたのだが、この機に、ちゃんとしたコンセントが欲しい。

　ニッチの背面にはトイレがある。そのトイレ壁は「クネット」を設置する都合上、一度手直しせねばならなかった。その作業の途中で、Ｋさんがニッチ側に立ち、Ｓさんがトイレ内に入り、ガガガガガッと穴を開けて壁内に電線を通し、無事、元電話置き場に三個口のコンセントがついた。おお、やっと平成仕様だ。

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　アマの仕事：　その２

　旧電話置き場に電源が付いたので、そこに並べる機器を繋いだのだが、どうも見た目がすっきりしない。のたうつコードが丸見えで、それらをまとめてみても、ゴチャゴチャはゴチャゴチャ。ここに小さな棚があったらいいな。後ろからコードが通るようなコの字か、またはロの字のフレーム棚。作ろうかな。「ええっと、このぐらいの幅で〜」と簡単な図面を書いてみる。それから、「ホームセンターで板を買って〜、釘で打って〜」と思いながら、その前に、ふと思いついて、近所のリサイクルショップに寄ってみる。

　あったよ・・・。どっかの素人が適当に作ったと思われる口の字型の木工作品。材木そのままで、釘なし、ただボンドで接着してあるだけ。無骨だが丈夫そう。持参のメジャーで計ってみれば、サイズぴったりやん。１００円の値札がついている。　奇跡か？

　持ち帰った口の字フレームに、ドア枠塗りで余ったペンキをペタペタする工作員。どうだっ！！

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　プロの仕事：　その３

　壁の正しい位置に絵を掛けるフックがほしい。その願いも今回叶えてもらった。間仕切りのベニア壁や石膏ボードならば、自前でフックを付けることもできるが、コンクリート面が難しい。以前になんとかつけたら、ある日突然フックが折れて額ごと落ちたことすら・・・。プラスチック製フックは弱いんだよね。金属のネジをしっかとコンクリに打ち込んでほしいとお願い。事前に壁の所定の位置に×印をつけ、作業の一段落を待つ。

　そして、Ｓさんがドリルを持ってやって来た。「コンクリの粉が出ますから」と、ビニールで部分養生をしてから作業開始。ガガガガガッ。ガガガガガッ。長年の希望が形となった。更に、過去の居住者が付けた、私にとっては不用なネジを全部抜いてもらう。自分の掛けたかった絵を、掛けたかった場所に掛けた。小さなことだが、素人の力ではなんともならないことだった。

　すべてのリフォームが終わった今、安らかな心でプロの工作員に感謝しながら、自分の好きな絵を眺めている。

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